バンクーバーの都市景観と街並み


今回実施いたしましたのは、北米西海岸を中心とし、北からバンクーバー、サンフランシスコ、ロスアンゼルスの3都市です。期間は六月十八日〜六月二十六日の9日間です。参加者は、ハウスメーカー、造園関係、設計事務所等の方々で、総勢17名でした。みなさん海外視察ということでの疲れもみせず、毎日が新しい発見と感動のうちに、あっという間の9日間でした。実は私、このようなコーディネータ役は始めての経験であり、お引受して大変不安がありました。幸いにも、私の長年の友人である平山氏(ロスアンゼルス在中、レックス・アソシエイツ代表)の協力を得ることができ、大変意義のある視察ができたと自負しております。主な見所としては、住宅開発の事例を始め、再開発地、複合ショッピングセンターなどであります。それと、今回特別企画としてニつセットしました。一つは、世界的ランドスケープアーキテクチャーであるバリーA‐バーカスさんの事務所訪問、もう一つは、ゴルフコースコミユニテイ(ゴルフ場と住宅をセット開発)で、プレイしながらその住宅を視察するという企画です。(ドーブ・キヤニオンゴルフコース、ロスアンゼルス) さて、街なみレポートですが、第一回目は総括編としてバンクーバーとロスアンゼルスの視察地をご紹介し、第二回目は技術編、第三回目はバーカス事務所訪問記として3回に分けご報告させていたたきます。
  
 

ダウンタウンの都市景観(スタンレーパークより見る)

バンクーバーという都市は実に完成しきった街だなという強い印象を受けました。スタンレーパークから見たダウンタウンの高層ビル群はスッキリしたファサードとスカイラインです。左に見える船の帆の形をした屋根のあるカナダプレイスが、港湾都市のシンボルとして、実にすばらしい景観を成しています。バラード入江越に見るこの景観は、あたかも水上都市のごとくロマンチックでさえあります。

ダウンタウンより見る入江越の景観

 ダウンタウンからバラード入江越に見る北西の景観は実に圧巻です。遠方にウエストバンクーバーの高い山並があり、手前に、樹高30メートル位の原生林を有したスタンレーパーク(四百ha)、この淡い緑と濃い緑をライオンズブリッジが結び、手前は湖のような入江です。目に入る工作物はこのブリッジ以外ほとんど見当りません。夜ともなるとこのブリッジはイリユミネイトされ、行き交うフェリーの光と相まって、それは美しい限りです。こんな大都市の目の前に、かくもすばらしい自然が残されていることに、カナダという国の偉大さ感ぜずにはいられません。

都市景観形成における都市計画が、いかに重要であるか大変ショックを愛けました。日本との比較ということが、絶えず頭に過ぎるからです。経済大国日本の都市は、ありや一体何た、そう問わずにはいられません。日本の街づくりは、都市レベルで深く考えてみなけれぱならないのではないでしょうか。

フォルス・クリークの集合住宅

ここは、ダウンタウンより約2km南に位置し、EXP○86の跡地を利用して開発されたところです。高台に密集した住宅群と、クリークに狭まれた北傾斜です。計画に当っては、クリーク沿いの景観と、既成市街地とをどのように調和をとるかに重点が置かれたとのことです。ここからクリーク沿いにグランビルアイランドまで約1.5km遊歩道が整備されています。集合住宅は、切妻屋根にシックなべージユの外壁のタウンハウスです。バルコニーやパーゴラは、マリンカラーともいえましょうかブルーです。この住宅と、木製のフェンスや一部自然石の法止め、植栽の組み合せが実に見事でした。遊歩道沿いの景観は、右にヨットハーバーを有したクリークをながめながら、左は、斜面地の美しい集合住宅の連続です。よくみると、住宅は無論、ストリートファーニチャーや車止、護岸整備までが自然石や、天然の木材で構成されています。美しい景観づくりと合せ、遊歩道として、人に最も心地よい環境づくりに大変配慮されているなという印象を受けました。

景観にも優れ、人にやさしいこの遊歩道には、おのずと人が集まってくるというものです。ジョギングする人、乳母車をローラースケートしながら散歩(?)する人、サイクリングする人、人様々です。ダウンタウン及びその周辺のこの景観計画は、優れた行政側の都市計画の成せる結果と思われます。ここでは計画者の卓越したランドプラニングとその詳細計画です。



ノースバンクーバーのタウンハウス

平山氏(レックス・アソシエイツ(ロスアンゼルス在中)と、彼が20年前に住んでいたというノースバンクーバのタウンハウスを見にいきました。この地区を走るハイウェー沿はうっそうとした森林地帯です。どこに住宅地があるのか見当もつかない程です。確かこの辺たという彼の記憶をたよりに着いたのは、森の中の高級なコテージといった印象で、これまたびっくり。これで20年以上も経った住宅かと。シングル暮の屋根に木材をふんだんに使った外観が自然と調和し、ゆきとどいた管理には驚きでした。フォルスクリークの集合住宅の小ぎれいさは解るとしても、森の中のタウンハウス(それも20年以上経過している。)が、どうしてこれ程まできれいに維持できるのでしょうか。私なりの結論は、次項でまとめさせていたたきます。

まとめ

1 働く、住む、余暇、いこいの場の整った都市
私は始めの印象として、バンクーバーという都市は、実に完成しきっていると思った訳です。高層ピル群からなるピジネス街のダウンタウン、フォルスクリークのような美しく維持管理された集合住宅、グランピルアイランドの港湾施設の再開発、四百haのスタンレーパーク、波静かなバラード入江やフオルスクリーク、大規模なヨットハーバーや美しい散策路。つまヴ、バンクーバーは大都市でありながら人が生きていく中で最も大事な@働く二A住むごB余暇の3つの場が、居ながらにして一つの都市で完結しているのです。

A行政の役割
都市の景観づくりから土地利用計画は無論住宅地計画の詳細まで、行政が強い権限と優れたセンスと技術をもってコントロールしているに違いありません。でなけれぱ今日見るような美しい調和のとれた都市の完成は考えられません。日本流の「街づくり」というと、都市全体は手のつけようがないから、せめて小さな単位ぐらい(戸建住宅でいえぱ50戸i〜100戸位)集合的、計画的につくりましょうというのがせいぜいと思われます。バンクーバーの印象は、都市全体を計画的、集合的にとらへ、細部まで計画しているなという思いでした。とりもなおさず、ランドスケープデザインが極めて重要視されているのはまちがいありません。

B美しい環境と豊かな生活
この都市のように美しく、しかも働く、住む、余暇(いこう)の場のあるこういう環境で生活すれぱ、人々の性格もおのずとゆとりができてくるのでしょう。集合住宅であれ戸建往宅であれ、ゆきとどいた管埋と、きれいな生活の仕方には目をみはります。生活のゆとりが家の窓辺や庭先、玄関迄にも表われています。

美しい都市で生活するということは、自分の家も美しくして仲間に入れてもらうということなんではないでしょうか。
自分の家も小さな都市景観をつくるということに他なりません。それに比して、日本の家や住まい方は、実にひどいものです。街中を歩いていておどろいたことが二つあります。道路を横断しようとすると総ての車がすぐ止まり、渡りなさいと手をふってくれます。もう一つ、ゴミが全くおちていません。タバコの吸いがらも皆無です。カナダの人達は健康志向の人が多く、スモーカはけいべつされます。(参考までに、タバコの値投は日本の3倍位します)早朝のことです。スタンレーパークからウェストエンドを見てまわりました。思った通りの光景を目にしました。ボランティアのおじさんやおぱんさんが、ゴミ捨いをしているのです。そしてあたりは多くの人が散歩やジョギングし、行きかう人誰にも「グッドモーニング」と挨拶をかわすのでした。


人が豊かに暮らすという表われの一つとして、きれいな環境を維持したということもあるのではないのでしょうか。住宅も都市も美しくするためにはルールとマナーが必要です。そしてもっとよくするために自分達も窓辺に花を飾ったり、ボランティア活動をして積極的に参加していく。バンクーバーはそのモデル都市といえるのではないでしょうか。日本で問われるのは、都市も街並も、公(パブリック)にたいする配慮が最も求められ、考えていかねぱならないということではないでしょうか。「一戸の住宅も景観の一つである。」ということです。(つづく)

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