エクステリア技術編


 3回のシリーズでご紹介する視察団レポートは、今回が最後になります。技術編上して住宅のエクステリアを中心にご紹介し、最後にパーカス事務所訪問記をお話します。

大きな前庭(フロントヤード)の計画

●フロントヤードとバックヤード 日本でフロントヤードというと、住宅の南面仁ある主庭が考えられますが、アメリカでフロントヤードというと、道路側に面する住宅の前庭を借します。日本でいう主庭に当るところは、バックヤードといわれ、プライバシーが保たれる住宅の裏側の庭のこと仁なります。つまり、フロントヤードとは美しい沿道景観計画のための都市計画上の規制エリアです。20フィート(6メートル)のセットバックが義務づけられ、このエリアに建築物は建てられません。このエリアの住宅の敷地は必然的に二○○〜三○○坪位になります。ではこれだけ広いフロントヤードがどのように計画されているのか、具体的事例をご紹介します。
@ビバリービルズの大邸宅

パームツリー越に見る大邸宅です。高さ二○メートルもあるパームツリ−は、この位の大邸宅でないとバランスが保てないことでしょう。これだけ大きな住宅ですと、芝生と花物だけのフロントヤードですと、建物のフォサードが露出し過ぎ、落ち着きません。写真は、道踏側にレンガで土留し、その上に花物を植え、その後は生垣です。レンガと花と生垣の組み合せで人が最も接する歩道側を美しく、楽しくしています。これと住宅との間に高さ七〜八メートルのパームツリー一本を植えることで、街路樹のパームツリーと景観的統一をとり、かつシングル茸の屋根と白壁の住宅との空間的調和がはかられています。


Aロディオドライブの中規模な邸宅  
ピバリービルズ界隈の住宅ですから、中規模といっても、バックヤードにはプール付の住宅も多く、超高級な住宅であるわけで、ビバリーヒルズに比べて中規模という意味でご紹介します。写真の住宅は、建物のデザインとフロントヤードの構成が心憎いぱかりきめ細かく、見事に構成されています。建物はシングル葺の屋根と白壁ですが、玄関の外壁はレンガ貼とし、バランスよくシックに構えています。これに円筒型の階投室がほぼ中央に位置し、円錐の屋根に風見鶏を乗せ、建物をまとめ上げています。玄関までのアプローチは同じレンガで敷かれ住宅とエクステリアを連続的に空間処理しています。植込は左右に高木を配し、アプローチの両サイドはピンク、白、紫の大小の花が咲き乱れ、左にわずかに湾曲しながら玄間へと続きます。


Bファションアイランドの郊外型住宅
 これは中流の住宅の家で、フロントヤードは芝生だけで構成されています。敷地は少し傾斜しているにもかかわらず、左手前はレンガで法面を処埋し、和かみのある刈込の生垣で、芝生のフロントヤードと住宅を、安定感のある構成にしています。正面奥は軒下ですが、ストライプの入った白壁をバックにバランスよく植込がなされています。軒下であってもスプリンクラーを設けることで、こういう処理も可能となるわけです。
Cウエストウッドの傾斜地に建つ住宅   
ウエストウッドはピバリーヒルズの南西に位置し、中流の上位の人が住むところといわれています。これは道路側より大きく傾斜した敷地に建つ住宅です。シックなシングル茸の屋根と木柵、これと左右2本の中木を始め植込とのバランスが覚事です。この2本の中木は2ケ所の窓の正面にあり、プライバシーを確保しています。写5は同じ住宅の玄関アプローチ側です。木柵とバラで開放的にしてあります。木柵の止め(エッジ)ば巣箱のようなメールボックスです。これ一つとってもそのデザインには魅せられます。又、点景として、シックな建物にカラフルな星条旗が良く似合います。 道路側から傾斜した敷地に建つ住宅でも、建物と外構を一体的に処埋することによって、地形の特徴を生かしたこのような構成ができるということです。
  

小さな前庭の計画

 海洋リゾート地、ニューポートビーチにある周囲2キロメートル位のバルボアアイランドの小住宅のエクステリアをご紹介します。敷地は50〜60坪、建物はほとんど平屋で20〜30坪位です。前庭は2〜3メートル位しかありません。この狭い前庭を、建物のフォサードと合せ、見事に仕上げた多くの住宅を見ることができました。
@小さな家の小さな玄関の見せ方    
写真は白壁にライトブルーのオーニングとダークブルーの玄関ドアー、両サイドに玄関灯、ブラインド付のシンメトリーの窓。窓辺には木製のプランター、手前には白いデッキチェアーで実に色の配色と部材の構成が見事です。住んでいる人の高いセンスが窺がわれます。

A玄関ポーチを兼ねたテラス     
狭い前庭でも、広めのテラスを確保している例です。アプローチをL型にし、アプローチとテラスを共有しています。テラスに手摺は設けず、道路側に植込し、開放的ながらもテラスの空間領域を明確なものにしています。白い外壁ですが、アプローチ正面はレンガ貼とし、同じレンガでアプローチと門柱を仕上げ、少し重厚感のある外部空間をつくっています。空間処理の工夫と郡材の組み合せ、植栽とのバランスが実にうまいといえます。

Bパラソルのあるテラス     
 白い木柵のテラスにパラソルがよくマッチしています。狭いテラスでもあえて木柵は道路よりmセンチメートル位難し値込をしています。木柵の間にレンガの支柱を設け、その上にプランターが乗せられています。

C大きなハイビスカスのある家      
この家は配置を逆L字型にし、まとまっだテラスを確保するよう工夫されています。前面道路一杯にせり出した切妻の正面と、テラス側は大きな開口部(窓)を設けて、その角に葉ぱり5メートル位のハイビスカスが植えられています。ハイビスカスのうしろは3坪位のテラスとなっており、この木の存在はほど良いテラスの空間を構成すると同時に、室内にあっては大きな窓をもってインテリア化されているはずです。写真には半分しか映っていませんが、ハイビスカスに合せ、赤いパラソルがテラスに置かれ、バランスをとっています。道路側の足もとは木柵を配し、ゼラニウムや白い花でピリット建物の外観をひき締めています。

中間領城を計画する

中間領域を計画するということはどういうことかご説明したいと思います。事業する立場からとらえます と、建築工事とは建物本体の壁面より1メートル以内の工事で、本体以外ではぬれ縁や、出巾1メートル位のテラスなどが含まれます。大きなテラスやウッドデッキは例外的に建築工事に含める場合もあります。それ以外は外構工事として扱っています。しかし、住まいでの生活をより豊かにしたり、建物の外観や街並を美しくするだめには敷地内に建つ工作物を計画的トータルで考えなけれぱなりません。そういった工作物にはどのようなものがあり、どう計画したら良いのか、それを「中間領城を計画する」というとらえ方で、今回視察した事例の中からご紹介したいと思います。
@バーゴラ
      これはウッドブリッジ(人造湖のあるニュータウン)のパーゴラを配しだ家並です。パーゴラが歩行者専用道路沿いにリズミカルに続きます。ウッドデッキの手摺の高さに生垣が植えられ、プライベートな空間を明確にしています。歩専道側のフロントヤードをバックヤード(プライベート空間)化したアメリカではめずらしい住戸計画といえます。 これは集合住宅の専用庭のパーゴラです。ブライバシー確保のスクリーンを兼ねるといった機能性と、建物全体を美しくさせるためのデザイン処理がなされています。人の視線に最もとどまるところということで、大変工夫されたことと思われます。色はライトブルーで、手前の黒い丸太材と植込とのバランスがあまりにも見事です。

Aウッドフェンス       
これは集合住宅専用庭のウッドフェンスです。自然石を基礎とし、高さ90センチメートル位のものです。手前の生垣は同じ高さで列植することなく、少し自然石を見せながらアレンジされています。 コモンスベースの芝生との境はブランドカバーのツタ類を植え、生垣の切れ目には花木が植えられています。総て計算された植栽計画がなされているものと思われます。

Bスクリーン        
同じ地区の集合住宅の専用庭のスクリーンですが、これは高さ一八○センチメートル位で完全にブライバシーを確保しています。スクリーンの足元は株の植込と花で、白いスクリーンにはバラをからませてあります。写真右側は2住戸の玄関ですが、ブルーの庇を設け、その分離には白い木柵をあしらった植込で処理されています。 

C門屏         
これは木造タウンハウスの門扉です。木製の階段に合せ、格子のデザインがよくマッチしています。左右同じでありながら、植込やプランタ−でちょっとアレンジ、更に階段の手摺や門扉の数字は住居表示ですが、これも合せてデザイン処理されています。

D塀
 芝生のコモンスペースに面する専用庭のシンプルな塀ですが、ツタ類をからませ、大変落ちついた外観を構成しています。ベージュの塀の色と緑の組み合せがうまくマッチしています。 
E法留         
傾斜した芝生のコモンスペースの処理です。丸太材を便用して斜面の一部を法留しています。その上には白木材を渡し、ベンチも兼ねています。緩やかな芝生の傾斜を、水平らのラインでひき締め、美観と実用を兼ねているわけです。

F玄関前の処理          
これは歩専道より直接出入する集合住宅の玄関前の処理です。直接玄関ドアーを見せることなく、しかし入口ですよというサインにもなっています。白いスクリーンと上下のプランターの組み合せが、美しく構成されています。

ストリートファニチャー

 美しい街並を構成する小道具としてストリートファニチャーがあります。街灯、ベンチ、ゴミ箱、車止めなど多くのものがありますが、そのいくつかをご紹介します。

 @ブランター          
 プランターの良さは、どこでも簡単に置けて、緑や花がセットできることです。写真はレストラン前に置かれた素焼の大小二つのプランターです。素焼であることが、木製のべンチとよく調和しています。写19は歩専道から住戸入口に分岐する所に置かれた木製のプランターです。ご三方向の人の流れをスムーズにするロ-タリーの役割をしています。木製であることが洗出しの舗道と植込の緑とよく調和されています。

Aゴミ箱           
レンガ舖装の上に木製のベンチと組み合せてセットされています。ゴミ袋をおさえる枠がちょっと傾き、ユーモラスに見えます。このようなゴミ箱ならぱ、ベンチ前にあっても全く気にならないことでしょう。

B杭(ボラード)          
 これはクリーク沿いの遊歩道です。並木と杭でサイクリングロードと散策路を分離しています。この杭は写真ようにベンチにもなります。人にやさしい木製です。

バーカス事務所訪問記

 サンタバーバラ市に本社を置く、全米屈指の建築設計事務所のアーバイン支社を訪問し、同社代表のバリ‐A‐バーカス氏によるランドプランニングを中心としたスライド・プレゼンテーションを受けました。以下その内容をご紹介します。  バーカス氏は単体としての建築でなく、世界各地においてコミュニティーのプランニング、デザイン、生活環境、そしてレクリエーション環境を再考し、改善してゆくプロジェクトを数多く手掛けております。スライドでは現在進められているマレーシアの埋立事業(住宅、リゾートホテル、 コンベンションセンター、ゴルフコース、商業施設等の総合開発プロジェクト)を始め、多くの事例をご紹介いただきました。又、設計作業中のスタッフの方々ともお話でき、アメリカの設計事務所の雰囲気も味わうことができました。以下バーカス氏のお語で、印象に残った点についてご報吉します。
@日本の景観について
 日本は大変緑が多く、世界でも有数の恵まれた環境にあるとのことでした。しかしプランニングについてはその環境を生かしきれてないことを残念がっておられましだ。日本の開発例を思い起せぱ、心が痛む思いでした。
A日本の開発について
 あまりにも計算だかく設計され過ぎているとのこと。環境とは、人があってのものであり、〃ゆとり〃というものを大事にしなけれぱいけないというご指摘。そのためには小さなコミュニティーづくりを大切にしなけれぱいけないということで、日本では、農村社会に見習うべき多くの点があるのではないかということでした。
B日本人の環境に対する意識仁ついて
 日本のように車が多い街にあっては隣近所に気を使うことがなくなってしまうということでした。このことは多分、自分の家も含め、環境に対する心くぱりもなく、美しい街並形成ができにくくしているということだと思います。※〈アメリカの住宅地のアプローチ道路はクルドサックス方式(行き止まり))
Cアメリカのおもしろさについて
 アメリカは数多くの国の人が住んでおり、多種多様な文化を持ち合せている。その文化が孤立した存在ではなく、お互にうまく貢献し合いながら今日を築いている。ですから外国のプロジエクトを進めるに当っても同じで、その国の文化をみることによって、解決方法を得ることが大事であるとのことでした。 D設計に当って
 どのプロジェクトに対しても、常に心掛けておられるのが、設計作業中にあっても現実をイメージした空間に自分を置き、目の動きに沿った空間のあり方を考えるとのこと。どのようにしだら楽しいかを考えながら設計していくとのこと。それからバーカス氏の環境計画には水辺を多く取り入れたものが多いようですが、水辺の良さを次のようにいわれました。水が身辺にあることは静けさがあり安らぎを味わう。水があること仁よってのみ得られる景観がある。建物が水面に映り、日常にあっても絶えず景観に変化と心地良さを与えてくれると。
Eバーカス氏について
 バーカス氏は大変な八ードスケジュールで設計活動をしておられながら、大のスポーツマンでもいらっしゃる。ヨット、バスケット、スキーはトップクラスだそうです。彼いわく、「スポーツは頭と体をリフレッシュしてくれる。」と。

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